『君がため  花を手向けん』制作ノート



本画








テクスチュア拡大、変形
形をおこしながら









前後関係
描き込みの粗密

背景色のみ置いた画面に
ざくざくと見えたままにモチーフの『あたり』を描く。
画面サイズは最終的に1400×2000pixelとなった。
彼の長い脚から腕を通り
目線は天使像を伝って天へと向かう。
全ての線はそれを補うように
縦の方向を強調する。

一方墓標。
彼の見え方から割り出した地平線をもとに
大体の二点透視であたりをとる。
いかに亡霊といえど、いやだからこそ
ちゃんと座れているように描写しなければならない。
キー・ポイントはもちろん
腰、右足、左足の位置。
そこから墓標そのものの形が決まってくる。

光。
薄曇りの満月の夜。
きっぱりとした影は落ちない。
狭いトーンの幅のなかで立体感遠近感が出せるか?
光の方向は彼に付けられた影で既に決まっている。

舞台はどこか。
修道院などの共同墓地ではない。
広い土地を代々受け継ぐ旧家の専用墓所だろう。
が、決して手入れは行き届いていない。
昔日の栄華はもはやないようだ。

天使像。
身長が決まり、翼の広がりも決まってくる。
南方的軽装の陽気な天使ではなく
北方ルネサンス風の重々しい装束が欲しい。
ファン・デル・ウェイデンの描く天使の衣装を参考にする。
たっぷりとした衣装に説得力を持たせるために
裸身を一度しっかりと描き取ってみる。

一枚の絵の世界として方向性をはっきりさせるには
タイトルを決めるといい。
他国からのお客さんのために英語でも考える。
日本語でさえ難儀するのに英語とは・・・。
本や詩をもっと英語で読んでみるといいのだろうか。


あとは只描き込むばかり。
一つのソフトでの作業になんとなく煮詰まってきたら
別のソフトに移して他のアプローチをしてみる。
気分も変わるし機能も分かってくる。
今回はPainter Classicのテクスチュア機能が活躍してくれた。
openCanvasの乗算、加算、減算レイヤも大活躍。
ただPCのスペックが追いつかず
処理待ち時間にお茶が入れられるほど。
これはこれで休憩になっていい。固まりさえしなければ・・。

適切な場所に必要な手間をかけるのを惜しんではいけない。
これくらいでまぁいいや、で済ませると
それまでの自分の絵よりさえ退化してゆく。
「面倒臭い」は
なんでもママにやってもらってあたりまえ、のこども
が言うコトバだ。
暗いトーンをかぶせ、明るい部分を描き起こす。
影の中にさらに必要なトーンを見付ける。
単純に言えばその繰り返し。


ひととおり着彩描写が行き渡ったところで
「さぁ、ここからが本番」と気を取り直す。
もう一度、初めてこの絵を見たつもりで画面と向かい合う。
描写の甘いところ、雑なまま忘れられていたところ
本題から外れてしまうノイズのような部分
描くべきだったのに後回しになっていた部分
手を入れていく。
疲れてくる。
そういうときはPCを閉じてさっさと寝る。

もう省く部分はないか。
もう描き込むべき部分はないか。
そして彼と世界とのドラマは表現できているのか。


サインを入れる位置にはいつも悩む。
構図段階ではそんなもの(?)全然念頭にないからだ。
90度倒して縦書きで入れる。
フォントはちょっと遊び。
最近見付けたStar Trekのフォントさ。にまにま。


縮小率は先方に渡すものは50%。
最初にいただいた絵のサイズに合わせる。
サイトにUPするものは45%
公開した瞬間、絵は私の手元から自立する。
願わくばたった一人の人にでも
その心に届きますように・・・。






ノイズ、描き込み、トーン
エッジに注意









肉体ではなく
石像であるということ
質感と影の付け方



05.19
新しいモニターでの見え方にあわせて加筆。
書き割りのようになっていた背景に
トーンをかぶせて空間表現をもう少し。





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