『君がため  花を手向けん』制作ノート



構想



背景色を置く




裸像のアタリと着衣






アタリから描き込み

まずいただいた絵を「見る」。
「彼」の表情、ポーズ、着衣、色、
ゆっくりじっくりと語りかけてくるまで、語り合えるまで見る。

彼が何色の空気の中にいるのか、
様々な背景色を置いてみる。
暗い灰青色が響き合うようだ。

彼の視線はこちらを向いている。
でも彼はこちらと関係を持とうとはしていないように思える。
むしろ拒絶している。
組んだ手もそれを示しているようだ。
何故だろう・・?
どんな人物を配しても、その人物がどれだけ彼に心を開いても
彼は独りでいるような気がする。

長い脚もバリケードのようだ。

お尻の置かれた位置と右足の載せられた位置、
左足が下ろされた位置、全て高さが違う。
彼はどこに居るのだろう。

カントリーハウス風室内、階段。
彼は自分の世界にこもって
応える望みのない相手を黙って見ているのか。
「亡霊に恋した男」?

二人の人物は絵の中でばらばらになる。
かろうじて
長い脚の線で二人を(構図上)つなぐことが出来るだけ。
しかも彼の視線は脚の線の先には向いていない。
響きあいも語り合いもない世界。
・・・・そんな絵は描きたくない。

脚の線が気になる。
斜めに大胆に画面を切る線。
下手な位置に置けば絵が分断される。
かと言ってモチーフで線を切るのも芸がない。
縦長の画面の下部に彼を配する。
するとその脚で
上部にかなりのボリュームを持ってきても
支えきることが出来そうだ。

ボリューム--巨木のイメージ?
今回は抽象的イメージではなく
正攻法の具象背景でどうしても進めたい。
ひろげた翼?--天使?
安易すぎて少しげんなりする。
ウェブ上には無数の天使が既に住んでいる。

天使「像」
以前ドイツに行ったときに見た墓標としての天使像を思い出す。
イメージが走り始める。
絵葉書、画集、写真集、思いつくものを本棚から抜き出し
補間にはウェブでイメージ検索をかける。

外界との関係を拒絶し続けるというのなら
彼自身も亡霊なのだ。
墓標の主へのあわれな執着。
天使像は彼の後ろで天を指し示す。
彼がそれを見るのはいつのことだろう。
足元には「純潔」の花、百合が
ひっそりと白い花をつけている・・・。





描き込み、ノイズ、テクスチュア







描き込み、質感表現
(テクスチュア、パステル)






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